あるところに何をしても続かない一人の女の子がいまいした。
何をしても言い訳ばかり。あれはヤダ、これはヤダ。
大学のサークルも、就職してからの仕事もすぐ止めてしまう。
きずけば彼女の履歴書はたくさんの職種が並ぶようになった。
「どうせすぐ辞めるんじゃない?」
「チョット今回はねぇ」
「これじゃあ信用できないなぁ」
いつしか彼女を正社員で雇う会社はなくなっていった。
その後派遣社員となるもやはりすぐ辞めてしまうのだった。
こんな私じゃだめだ。
我慢強くなりたい。
でもどう頑張ってもなぜか続かない。
そんな時にきた仕事がスーパーのレジ打ちだった。
しかし数週間後単純作業が嫌になり結局また彼女の辞めたい衝動が彼女を襲う。
そんな矢先電話が鳴る。田舎の母からだった。
「もう帰っておいで」
母の一言に覚悟を決めて辞表を書き荷物をまとめ出した時、
あるものを見つける。
それは子供の頃の日記だった。
ピアニストになりたい。はっきりとそう書かれていた。
唯一長く続けられたのはピアノだった。
彼女の中で静かな変化が起きた。
もう逃げるのはやめよう。
お母さんもうチョット頑張ってみる。
なぜだか涙が出た。
ピアノも練習するうちに鍵盤を見ずに弾けるようになった。
ひょっとしたらレジうちも彼女は特訓を始めた。
大好きだったピアノを弾くように。
彼女はいつの間にかレジうちの達人になっていた。
変化はすぐに現れた。
お客様の顔を見る事ができる余裕が、次第に顔を覚える事ができ話しかける事が出来るようになった。
「あら鯛ですね、いい事あったんですか?」
「わかる?孫が水泳で賞を取ったの」
「それは良かったですね。おめでとう御座います」
彼女はたくさんのお客様とお話しが出来るようになりました。
そんな時ある事件が起きます。
それは店内アナウンスがなんども流れるほど忙しい日だった。
「お客様どうぞ空いているレジにお回りください」
「重ねて申し上げます。どうぞ空いているレジにお回りください」
彼女が見渡してみると・・・
彼女のレジにだけお客様の長い列が・・・
「お客様どうぞあちらのレジへ」
「嫌よ、私は彼女と話をしにここ来てるの!」
「私もよ、だからこのレジに並ばせて?」
その光景を目にして手を思わず止めた。
溢れる想いは歓喜の雫となりその場に泣き崩れた。
その後もレジからは会話が途切れなかった。
程なくして彼女はレジの主任となった。
そのまま新人教育も担当する。
彼女の履歴書がその後どうなったかは誰も知らない。
(フォレスト出版より)
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