余命を聞いてはいけない。
ある常連のの客様が見えました。
僕がまだ27歳の頃から来ていただいているお客様で本当にわがままな方です。
日曜日の5時に必ずご夫婦で来店されるんですが持論や隣のお客様に絡んだりするのです。ですから当然他の店でも嫌われているのですが何故か僕は好かれていました。
それは簡単な話僕も好きだったからかもしれません。
ご来店時は必ず僕の前に座り料理をて提供しながらその方のお話を聞きます。
マシンガンのごとくお話をされるのですがどのお話も楽しく聞き入ってしまうんです。
お話は人生哲学が多くブッダのお話もよく聞きました。
もちろん口も肥えておりましたので大変です。
でも僕が店舗を代わり、そして店舗が変わっても必ず日曜日の5時に来店してくれたのです。
そんな時間が7年ぐらい経った時、こんな事が起きました。
僕の店は5時オープンです。
3時にいきなりすごい勢いで押しかけてきました。
「おーいっ!!まこっちゃん!!すぐ飲ませてくれ!」
僕たちスタッフ一同唖然となりながらも僕は察知しました。
何かあったんだなと。
僕は何も言わずに持ち場に立ちました。
いつもの僕の前に座り僕は何も聞かずにいつも通り料理を作り始めます。
「今日は早いですね。何作ります?」
「とりあえず飲ませろ。んでまこっちゃんも飲め‼︎」
「はい、いただきます」
と言って二人の時間です。
奥様も見えましたがご主人は僕との話に夢中です。
しばらく無言で僕は黙ったままお客様の好みを出していきます。
「まこっちゃん、ちょっと聞いて」
「なんですか?」(笑顔で)
「今病院いってきた。肺がんステージ4って」
心の準備できてました。お昼のこんな時間にきて本当は申し訳ないって思っている
このか方の状況は少しでも把握していたわけです。
そして泣き崩れて僕に言います
「俺は余命聞かなかったぞ!!だってそんなもん聞いたら……
生きていけないだろ!!」
・・・・
そう思って黙ってお互い泣きながらお互い飲みました。
余命って聞いちゃいけないし言っちゃいけないんだ。
決まってもいないことだし生きていけないことだから。
物理がどうだとかそんな事どうでもいいって。
生きる事の本質を学んだ出来事。
今でもその方は忘れない。