これは勉強になります!?
少し前に魚の神経締めについて記事を読んだので、ちょっと自分でも調べてみま
した。響きがカッコイイですね。即殺とか延髄殺しなんて表現も一緒です。
獲った魚を殺すことを「締(し)める」といいます。
野締め・活け締めなんていうのがありますが、どうも人によって表現が違うみた
いです。ややこしいので「~締め」という表現をせずに分けると大体
①獲ったあと放置
②獲ったあと氷水につける
③エラをもぎ取る
④鋭利なもので頸と尾の脊髄を断ち切り、血を抜く
という風です。下の項目ほど手間がかかります。で、肝心の神経締めは
・針金(ピアノ線やワイヤーなど)を魚の脊髄内部に通す
という処理を指します。ではなぜこんな面倒なことをするのか?
せっかく獲った魚を美味しくいただくためです。
ではなぜ美味しいのか?
それは魚の身が、死後どう変化するかが関係しています。
人も魚も、筋肉を作っている細胞はATPという物質を使って収縮します。(※筋
肉は縮むのが仕事です。筋肉が「伸びる」のは反対側の筋肉がより大きな力で縮
んでいるからです。)
生きて呼吸をしている間はATPが筋肉で消費されてもまた生産され続けます。
この状態では筋肉はしなやかに動きます。しかし死後、一定時間が経つとATP
が消費され尽くしてしまい、筋肉の伸縮に制限が出てきます。死後硬直の始まり
です。
他のサイトでもありますが、魚の死後硬直は死後数分~数十時間の間で起き、数
時間~1日程度続きます。
ATPは消費された後、いくつかの過程を経て旨味物質へと変わっていきます。
捌いて2、3日置いたほうが美味しくなるといわれるのはこのためです。
死後、これらの反応と並行して細胞の自己消化も始まり、死後硬直は(見た目上)
解けて身は軟化→微生物による分解(=腐敗)となります。もちろん、この期間も魚
種や保存状態によりまちまちです。
神経締めはこのATPの消費を減らし、死後硬直の開始時期を遅らせるために行
います。
①の方法は最悪です。死ぬまで暴れ続けるのでATPを使い切ってしまい、死後
硬直以降の生理現象が早まります(=すぐ傷む)。
②の方法はスピーディーに締められますが、化学的にNGです。「筋小胞体のカ
ルシウムイオンうんたらかんたら(略)」で、かえってATPの分解が早まります(氷冷収縮)。
ちなみに温度は10℃で保管するのが良いようです。
(急速冷凍は反応を止めてくれますが、冷凍時と解凍時に細胞が傷むため酵素の働
きが良くなり、解凍した後の反応がこれまた早まります。)
一番良い方法
なので③or④を行ったうえで神経締め、が良いのですが、マグロなどの大型魚で
こそ活きる技術のようです。(そもそも大型のマグロは頸を断ち切るのが難しい)
それは大型魚の場合、頸の脊髄を断ち切ってもしばらく後に突然暴れることがあ
るからです。(そういえば見たことあるような……。ひとの釣果ですけど。)
小型魚はその心配よりも、温度管理に気を配ったほうが良さそうです。
神経締めは魚をより美味しくする技術ではなく、良い状態をなるべく長くキープ
する技術ということですね。そしてこの処理を活かすためにまた気を遣わなけれ
ばならないことがいろいろある、と。
はぁ、活かせる魚とか釣ってみたいなァ。